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FET差動バランス型ヘッドホンアンプの作成(その3)

ぺるけさんは、FET差動バランス型ヘッドホンアンプHPの最後に、基本となっているアンバランス版のヘッドホンアンプより帯域特性が悪くなっている事が気になり、帯域特性を良く使用と2つの案を記載されようとしています。

当初、その1では、前段差動PPアンプ(メイン・アンプ)に記載されているクロス中和の方法が書かれていて、その2は書かれていませんでした。なので、その2をぺるけさんが書かれる前に予想し、予習しようと思いました。

その1の内容から、初段の差動回路のゲート・ドレイン間容量Crossを相殺する方向の対策である事、また、掲示板で半導体が増えると書かれていたので、予てより試してみたいと思っていたカスコード接続の可能性が高いと予想して実際の回路定数をどの様に決めたら良いのか思案しているうちに、HPのその2のところに「カスコードを使う」と書かれていました…。

考えていた方向に間違いは無かったようです。


diff_kai_cascode.png

最初は上図の様な普通のカスコードの可能性が高いかなと思いっていたのですが、定本を見ていると、ブートストラップ型のカスコードの可能性も出てきました。

diff_kai_bootstrap_cascode_nomal.png

また、LEDの電圧降下を利用したこんなブートストラップ型のカスコードもありかな?と思っています。ノイズの面ではどちらが有利なんでしょう? 何れにしても、ブートストラップ型のカスコードにすると、差動回路を形成する定電流部分の電流値を見直す必要があります。

diff_kai_bootstrap_cascode_led.png
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FET差動バランス型ヘッドホンアンプの作成(その2)

オリジナルの回路とは初段の差動回路の増幅率が変わることになるが、最終利得はヘッドホンに丁度いいとされる9dB(2.83倍)にしたいので、この値に近づけられる様に負帰還の量を調整します。帰還に使われている回路はp-g帰還回路です。利得の計算方法と入力インピーダンスの計算方法は以前に記載した通りです。

HPAへの入力は残念ながら手持ちではアンバランス型しかありません。なので、これを基準に今所持しているHPA(ぺるけ式 FET式差動ヘッドホンアンプ(AC100V版))と最終利得が同じになるように帰還量を調節します。この回路ではアンバランスの入力をバランスに変換するとそれぞれの振幅が1/2になります。が、出力結果をヘッドホンの両端で使うので2倍になり、結局分割して計算しなかった利得と同じになります。

この回路の想定では…。

・裸利得=21倍
・最終利得=9dB(2.83倍)

この値をベースにして帰還に関連する抵抗値を決定しなければなりませんが、ここが頭を悩ませるところです。E-24系列の抵抗値を用いて帰還量と調整して…とやっているとなかなかめんどくさいので、プログラムを作成してみました。

【ソースコード】
balanced_diff_hpa_pg_gain_rs_rf.cpp

【出力結果】

Rs=24000, Rf=82000, pg_gain=2.82295, input=27727.3, diff=0.0070491
Rs=240000, Rf=820000, pg_gain=2.82295, input=277273, diff=0.0070491
Rs=22000, Rf=75000, pg_gain=2.81753, input=25409.1, diff=0.0124686
Rs=220000, Rf=750000, pg_gain=2.81753, input=254091, diff=0.0124686
Rs=18000, Rf=62000, pg_gain=2.84279, input=20818.2, diff=-0.0127948
Rs=180000, Rf=620000, pg_gain=2.84279, input=208182, diff=-0.0127948
Rs=47000, Rf=160000, pg_gain=2.81407, input=54272.7, diff=0.0159296
Rs=15000, Rf=51000, pg_gain=2.81102, input=17318.2, diff=0.0189763
Rs=20000, Rf=68000, pg_gain=2.81102, input=23090.9, diff=0.0189763
Rs=150000, Rf=510000, pg_gain=2.81102, input=173182, diff=0.0189763
Rs=200000, Rf=680000, pg_gain=2.81102, input=230909, diff=0.0189763
Rs=27000, Rf=91000, pg_gain=2.78978, input=31136.4, diff=0.0402189
Rs=270000, Rf=910000, pg_gain=2.78978, input=311364, diff=0.0402189
Rs=43000, Rf=150000, pg_gain=2.87409, input=49818.2, diff=-0.0440877
Rs=16000, Rf=56000, pg_gain=2.88235, input=18545.5, diff=-0.052353
Rs=160000, Rf=560000, pg_gain=2.88235, input=185455, diff=-0.052353
Rs=30000, Rf=100000, pg_gain=2.76316, input=34545.5, diff=0.066842
Rs=33000, Rf=110000, pg_gain=2.76316, input=38000, diff=0.066842
Rs=36000, Rf=120000, pg_gain=2.76316, input=41454.5, diff=0.066842

この結果より、信号に直列に入っている抵抗Rsと帰還抵抗Rfは Rs=47kΩ, Rf=160kΩ とするのが妥当なようです。

アンプ部分の全体の回路はこんな感じになります。

balanced_diff_hpa_01.png

差動増幅の定電流回路はJFETに変更しています。

出力コンデンサの出力側とGNDを繋いでいる150Ωの抵抗はヘッドホンを挿入せずに電源を入れた時に発振しない様に付けられているらしいです。それと、この抵抗がないと本体電源ON後にヘッドホンを繋いだ時に出力コンデンサに電荷が急激に溜まり、ポップノイズとなるのでそれを防ぐ効果もあるようです。

FET差動バランス型ヘッドホンアンプの作成(その1)

ぺるけさんが、FET差動バランス型ヘッドホンアンプの回路を公開されました。このアンプは以前に作成されたアンバランス型のヘッドホンアンプの回路をベースにされた回路で、前段の差動回路の反対側から反転した波形を採りだしてダイヤモンドバッファで電力増幅してます。

ただ単に非反転と反転回路の出力をヘッドホンのHOT/COLD端子に入れるだけか…と思いきや、結構工夫された構成になってます。ダイヤモンドバッファ段で全トランジスタをA級動作させることによって、信号経路にGNDが入らなくなり、これによって、+電源とGND間を繋ぐコンデンサには信号が回り込まなくなっています。また、差動回路の両側を信号用に使ってしまうので、負帰還回路がp-g帰還になっています。p-g帰還については以前、利得・入力インピーダンスの式をblogで簡単ですが導出しています。

ぺるけさんの回路をそのまま使うのも良いのですが、自分の頭を鍛えたいのと、据え置き型にするなら他のアンプ等とケースサイズを合わせたく(YM-300)、そうするとSW電源仕様では空きスペースがもったいないので、トランスを使った電源を作成しようと思います。

公開されたバランス型ヘッドホンアンプでは12V版のアンバランス型ヘッドホンアンプがベースとなっていて、ダイヤモンドバッファの前段部分を強化し、後段部分のアイドリング電流を増やすことによってA級動作する領域を広げられています。

A級動作領域がどういった条件下で実現するのかはここの<出力段…ヘッドホン駆動のメカニズム>のところで解説されています。アンバランス型のSEPPの説明になるのでバランス型とは少し電流の流れ先(元)が異なりますが、定数の決め方はおおむね同じです。

バランス版の後段部分のアイドル電流がアンバランス版(12V版)の21mAから27mAに増やされているらしいです……が、実は、アンバランス版(AC100V版)では既に31mAまで増やされています。また、前段部分の強化も行われているので、差動増幅回路とダイヤモンドバッファ部分の定数はAC100V版の値をそっくりそのまま使うことができます。
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